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ERICニュース 824号  2022.11.6 with ERIC号NO.37

このERICニュース(with ERIC号)は、熊本で子どもや若者をフリースクールという形で支援する加藤が日々の実践活動の中での気づきをまとめ、みなさんに共有するものです。2022年度は、「SDGs8つの優先課題」をテーマにしています。

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ERICニュース 824号  2022.11.6 with ERIC号NO.37
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目次
ごあいさつ
1)SDGs8つの優先課題(7)健康と長寿を考えるプログラム
あとがき

ごあいさつ
 毎年11月にNさん宅を訪れます。Nさんは、フリースクールに通っていた子どもで調理師の免許をとり、あるホテルの調理場で働き始めて2年目にバイク事故によって他界しました。もう10年ほど前の出来事になりますが当時関わっていた子どもや大人が集い、みんなが当時のこと、そして今のことを語り合う大切な行事です。今回のテーマは健康と長寿について考えるとき、死とどう向き合うかについて避けて通ることはできません。どのように生きるか、についてみなさんはどのような答えがあるでしょうか?
それでは、ERICニュース、今回もよろしくお願いします!

1)自分の考える「健康」とはどんなものなのか?
古代エジプト・メソポタミアでは、病気に対しては人体から魔物を追い出すことを自然や神に頼む加持祈祷が行われていたそうです。一方で吐剤で胃を浄め、浣腸で腸を洗浄したり、沐浴を勧め、飲料水を煮沸することを定めるなど現代を同じような衛生管理も行われていたというから驚きです。今でも体調が悪いときには神頼みをよくしている方もいるかもしれませんね。

ギリシャ・ローマ時代には、医学の祖と言われるヒポクラテスが宗教や迷信から脱却し、科学的な健康観をもって、健康や病気は環境と生活様式により影響を受けることを看破していました。生活様式とは現代の生活習慣のことですからヒポクラテスの先見の明は素晴らしいです。さらにヒポクラテスの後にはガレノスが、人間が本来もっている「気」「生命力」のようなものを持っていると主張しています。

その後、古代から中世にかけて数々の疫病に悩まされる時代が続きます。天然痘、ペスト、赤痢、コレラなどです。これら病原菌のまん延は帝国滅亡のきっかけにもなったと言われています。古代インドでは医療が発展できず、中国では病気は人間の力では克服できないものとされていました。古代日本は卑弥呼の例でもわかるように病気に対して巫術、呪術、宗教との関連でとらえていたのです。

16世紀以降、医学は自然科学とともに飛躍的に発展し、病原菌の発見、ワクチンの生成に成功し病気を回復させる方法が発達していきます。
そして1946年、WHOは健康を定義し、「完全な身体的、精神的、社会的に良好な状態であり、
単に疾病又は病弱の存在しないことではない」とし現在でも変わることはなく使用されています。
病気の対概念としての健康という面だけではなく、心身と社会面まで含めた画期的な概念であったが、完全かつ良好な状態としたことで障がい者や疾病者を排除することになり万人に受け入れられることが難しくなっていきました。長きにわたりWHOの定義は継続されていったが、その後植民地にされた国々が60年代に次々と独立していきますが、先進国と発展途上国との間に健康水準の大きな格差が生まれました。寿命を延ばすためには、高度医療や恵まれた社会文化的な状況が強く影響しているからです。
WHOは、社会経済的な格差が健康状態の差を生み出すことを看過できず、1978年に「2000年までにすべての人々に健康を」というアルマ・アタ宣言を出します。SDGsにも似たようなフレーズありますよね。続けてWHOは、86年に先進国を対象としたオタワ宣言を行い「ヘルスプロモーション」を推進していきます。ヘルスプロモーションは、自らの健康をコントロールしたり改善し健康増大をしようとするプロセスで、健康は目的から資源として活用して生きていく意義を示唆したのです。
科学の発展によって、長生きは可能となったが、ただ生命を維持させることだけが本人や社会にとって幸福なこととは限らないことから、生命の質QOLが注目された。QOLの定義として「個人が生活する文化や価値観の中で、目標や期待、基準および関心に関わる自分自身の人生の状況についての認識」とWHOはしています。

ここで健康観についてまとめてみます。
1.健康は絶対的な価値で、理想としての健康状態。WHOの定義通り完全な心身、社会的状態という考え方
2.生命の量としての健康。現代医療は、できる限り医療行為によって延命する事を価値とする考え方
3.QOLとしての健康。生命の量ではなくよりよい目標や期待、基準及び関心などを価値とする考え方
4.個別性のある健康。人は遺伝、生活環境の違いがあり、個々人の価値観に影響を受けるという考え方。
5.多面性のある健康。健康は、社会経済、文化、歴史などに影響を受けるという考え方
6.主体的行動としての健康。健康は、個人の主体的な選択とその活動による(責任)と結果という考え方。
7.公共性(権利)としての健康。健康であることは、すべての人の基本的人権であるという考え方。

あなたの考える健康観は、どれに近いものがありますか?ぜひ周りの人とも話し合ってみてください。

2)不調がなければ健康なのか?
 人間には不調を知らせる三大アラームがあると言われています。アラーム(警告)は、発熱、痛み、疲労感と言われています。特に心身の不調はなく生活に支障がない人にとっては、自分が健康かどうか考えることもあまりないのかもしれません。そのような状態は、自分は健康だと思って疑わないわけです。
 中には不安が強い人、不眠に近い人、病識がない人もいるかもしれません。周りが病的だなと思っていても肝心の本人が分からない人もいます。

 そんな時は、自分の元気度を1から10で評価してみましょう。自覚的評価は、根拠は自分の感覚でしかないので科学的であるかどうか微妙です。しかし継続していく中で自分の好不調が見えてきます。不登校の子どもをみて感じますが、1日の中でも良い悪いの波はありますし、1週間、1ヵ月の中でもあります。そんな体調の波を見える化することが自分の健康を意識する一番の方法なのかもしれません。

3)人生グラフを描いてみよう
 NPO法人カタリバの方に講演していただいた時のことです。A3くらいの容姿に、人生がライフステージにおいて良かったと思う時期にはプラス、悪かったと思う時期にはマイナスをして人生折れ線グラフを作成してみました。誰もがずっとプラス、マイナスではなくプラスになったりマイナスの時期があったりしながら人生は進んでいくものです。
 その時々に、自分のどんな思いがありまたどんな選択があったのかを振り返ることができます。そしてこれから残りの人生においても、今の選択の結果でプラスにもマイナスにもなることに気が付くはずです。人が生きる上で、自分で選択し自分で決定することを真剣に考えずに何となくすることこそ、自尊感情を低め、育ちにくくしてしまうのかもしれません。

まとめ
 ただ生きることだけを生まれたての赤ちゃんは目的としています。
育児をされないと生きてはいけないのが乳幼児です。しかし育つ中で自ら考え行動できるようになっていくのも人間です。
少しずつ親や家族から自立していき、自らの考え行動で人生を選択していかなければなりません。
今の子どもたちを見ているとあまりに過干渉であったり、過保護であったりして自分で考えることができない状態の子どもも多くいます。
保護者の育て方に問題があるわけですが、実は、その保護者もまた似たような環境で育っているために同じようにしかできないのです。
問題は世代を超えて引き継がれることもままあります。子どもたちにとって健康はあまり意識しないことではあります。ところが不登校になると様々な不調を訴えるようになります。今置かれている環境は自分にとって危険なものであると子どもたちが無言で教えてくれているかのようです。これは子ども自身に問題があるのでしょうか?私は、この社会にこそ問題があるのではないかと思わざるを得ません。このように考えることができるのも、多様な健康観が教えてくれる1つなのです。

あとがき
 健康は、失って始めてそのありがたさを知るとよく言われます。
元気に生活しているうちは自分の健康など考える必要はないからです。今の中高生を見ていると、いつもスマホに気をとられ、動画やゲームに支配されているかのような生活をしています。
スマホの向こう側には家族や友だちが常におり、まるで監視されているかのようにお互いを縛りあうことで関係性を確かめ合い、常にその向こう側にいる人に合わせた自分を演じています。常にこういうことを続けていれば、本来の自分自身というものを見失ってしまい心身を蝕んでいくのです。スマホがあるばかりにそんな苦しみを持ち続けなければならない子どもたちは、本当に健康で幸せなのかと首を傾げたくなるばかりです。
だからこそ、時にはPCもスマホも置いて、自分を取り戻す時間、振返って考える時間が必要です。本来の自分自身が出せる場がないことが一番の課題のような気がします。みなさんは、どのようにお考えですか?
次回もどうぞよろしくお願いします!

ご意見、ご感想は、hineg78vssazaby@gmail.com 加藤まで。次回のwith ERIC号をお楽しみに!
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by eric-news | 2022-11-06 14:36 | with ERIC from熊本 | Comments(0)

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